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2005年05月04日

そんな店、そんな夜

 ごくごく近所の、呑み屋らしい呑み屋で、呑み助らしい呑み助のおっさんと、自称藝術家らしい自称藝術家……つまり、如何にも無職らしい無職……同士、差し向いで呑んだ。
 然程ぱっとしないその呑み屋では、連休中の早めの夕方ということもあって客足も薄く、阿佐ヶ谷にあるのだからして、田舎というほど田舎ではないけれど、東京の中にあってはかなり鄙びた空気が流れていた。
 お酒を冷やで、と頼むと、女将は「常温でってことよね」と確認。つまり、冷やと言いながら、冷酒を要求する類の、知識不足の客が増えているのかいな、と、どうでもいいことが心配になる。高清水を枡からさえ零れるほどなみなみと注いでもらっていると、ああ、これが呑み屋てえものだなあ、と沁み沁み思う。酒の一滴二滴がどうのこうの、なんてことではなく、その呑み屋の女将の呑み屋の女将的気遣いが何とも言えず嬉しいのである。お酒様に失礼のないように呑まなくてはな、という気にもなりまさあ。
 ああだこうだ、と自称藝術家的な無駄話を交換していると、ふらりと女将が顔を出し、連休中だから何もできないのよ、あはは、と宣う。出てきたのは、鯨のスタミナ炒め。要するに、大量の大蒜で炒めてあるわけよ。医者に酒を止められている者同士が抓むには悪くない選択でありますな。
 暫く振りに会っても昔と変わらんね、などという話題も出たけれど、よく考えてみれば、お互い頭は真っ白だし、医者に酒は止められているし、五時に呑み始めて次の五時(場合によってはもう一つ先の五時)まで呑んでいるというような勢いはないし、相手のおっさんには高校生になる娘がいるし、私にだって女房がいるし。変わらないようでいて、実のところ、あれこれと随分と変わっているのである。そんなことを思ったら、こういうぱっとしない呑み屋がこの世から消えてしまう前に、「八十年代が羨ましいです」などという(微)妙な憧れを抱いている婦女子を連れてきてあげたいなあ、という気がした。

 自転車をこぎながら夜空を見上げた。星がとてもきれいだった。でも、そんなことしてると、転びますよ。もう昔とは違うんだからさ……って、酔っ払って自転車乗ってりゃ昔も転んでいましたね。

投稿者 zenta : 2005年05月04日 16:43

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コメント

ちょいとさっきまでイトー君なるアナザー飲み助などと飲んでましたんですが、かれは自転車で帰っていきましたな。私はいつぞや救急車に連行されてからその手の乗り物は封印しましたが、学習能力のない彼奴は、つい二月ほど前のギプスのことなど忘れているようですよ。

投稿者 望月正俊 : 2005年05月05日 02:52

先日は、団地で息子に声をかけて下さりありがとうございました。
もうずいぶんお久しぶりだと思うのですが、よく分かりましたね。すっかり大きくなっちゃったのに。

そういえば・・・「zentaさんって坂本龍一に似てるね。」って言ってたけど、あれは、、、白髪だからなのか。

投稿者 Rika : 2005年05月08日 10:31

 ひょろっと縦にのびた少年、こいつがこっそり辞書を引きまくっていたんだな、と思い浮かべて、爆笑を堪えるのに必死でしたよ。

投稿者 Zenta : 2005年05月08日 23:18

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