« 夏 | メイン | 海にお船を浮かべて〜 »

2005年06月18日

上棟式

事務所近くで工事が進んでいる診療所と住宅の上棟式があった。もともと何もない土地に、あるいは古い建物を取り壊して更地にした土地に、建物の骨組みができあがり、建物のかたちが現れたことを祝うのが上棟式である。地面を均したり整える地業(じぎょう)、基礎の工事につづいて、大工や鉄骨、コンクリートの工事が行われる。建築のすべての工程の中でもっとも荒々しく、かつ建物の骨格をつくる重要な工程である。また、その後の工事のための段取をし、さまざまなことを決定しなければならないのもこの時期で、それらを含めてひとつのものごとが達成された節目の儀式なのである。嬉しいことである。
上棟式は、施主が催し、それまで施工に携わった職人達をねぎらい工務店に感謝する。これから施工の中枢を担う職人たちも集まり工事の受渡しの意味もあるのだ。施工者は、施主自身や施主の家族、親戚などに会い、この建物をきちんとつくろうと気持ちを新たにする。また設計チームが建築(物理的なモノとしての建築を指すのではなく建て造る行為を指す)引張っていっていることをみんなが再認識する。酒を飲み交わし食事をし、建築をつくる三者が互いのことを一歩進んで理解する機会なのである。
当日は、鳶や鉄骨、型枠大工や鉄筋工など躯体の施工に携わった職人や各種工事に関わる人びと30人、工務店から8人、施主の関係者が子供を入れて15人くらい、そして設計チームは6人の合計60人もの人びとが集まった。全員が住宅の広間となる空間に入ってあまりあったのは、設計者としてもいささか驚きだった。子どもたちは、道路から住宅の中まで所狭しと走り回り、玄関の辺りにはバーベキューコーナーがつくられ煙がたちのぼる。住宅の空間は、都市的なさまざまな物事がおこる雑踏のようであり、それでいてもちろん私的な祝い事の雰囲気が漂う空間となっていた。僕は、実は僕だけが知ってるのではないかと思われるこの家のもっとも良い空間にすわって全体を見回していた。コンクリートの躯体が力強い、壁の量もよかった、窓の位置やサイズも何度も吟味しただけによさそうだ。そして何よりも許容力のある骨太な空間ができるような感じがして少し安心した。

投稿者 geta : 2005年06月18日 20:03

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://gokarasu.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/162

コメント

コメントしてください




保存しますか?