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2007年08月29日

困惑の道行き

 地主だというのに、私は未だに自分が所有するその土地を訪れたことがなかった。全く以て地主の風上に置けぬ有り様ではないか。寝起き早々発起した私は、取り敢えず、R1-Zに跨り、キック、キック。夏だというのに、一発ではかからない悲しさがあったけれども、兎にも角にも火が入り、発進。
 青梅街道をびゅうびゅう走って、四面道を右折、谷原で左折して、気がつくと関越に乗っている。目的地はどこなのか、判然とせぬまま、直走る。
 何となく鶴ケ島インターで下りてみたものの、田舎と言うほど田舎ではなく、かといって、勿論、都会である筈もない町並みを漠然と走るばかり。いくつかの川を越えたところで、信号など存在しない辺鄙な通りに辿り着いた。放置されたログハウス様の空き店。中途半端な空地。小さな図書館、町役場、高校。人気はない。忘れた頃に、軽車両と擦れ違うだけ。
 路傍に単車を停め、ふと目を上げると辺り一面に山並が広がっている。昔ならここで一服というところだが、煙草はやめてしまった。自動販売機が見当たらず、缶コーヒーを飲むことも能わず。ヘルメットを取ると髪の毛がぺたんこ。生温い風が頬を撫でる。こういう感じは実に久し振りだ。
 ところで、私はここに何しに来たのだったろうか。

 なおも闇雲に走るうち、気の利いた和カフェなるものを発見して、湯呑みで珈琲を頂戴する。寝惚けた記憶を解いてみると、そうだ、地主様たる私は、広大なる我が土地を一目見ようと家を出たのだったではないか。然るに、その場所を知らぬままに飛び出し、びゃーびゃー走って、立ち止まって、さて、私は何をしに来たのだったろうか、などと呟いている。阿呆である。

 無事で何より、と思う他はない。この珈琲を飲み終えたら、とっとと帰ろう。そして、少し眠ることにしよう。みなさん、睡眠不足は正常な思考を妨げますよ。
 ああ、夏が終わる。

投稿者 zenta : 2007年08月29日 11:32

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