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2007年10月17日

ザ・ラスト・アシタバン

 明日葉生まれ明日葉育ちのキアゲハの幼虫たち、生粋のアシタバンズ。その食欲は旺盛でがんがんががんと喰い進む。秋休み気味だった葉が、その刺激でやる気が出たのか、負けてたまるかとどんどん育ち始めた。世の中、うまいことできておりますなあ。むぐむぐむぐむぐと齧られまくり、一つの枝が茎だけを残した棒状になる頃には、あちこちから新芽が出て、全体的には喰われた量よりも明らかに大きく育っている。しかも、若い葉は彩りも瑞々しく、見るからに活気に溢れ、おお、何だか気分いいぜ。わはははは。
 しかしながら、何事にも終わりはあるのであります。アシタバンズは、十分にでかくなると、一匹、また、一匹とどこかへ消えてゆく。貪欲烏に啄ばまれたのではなく、蛹化を前に、安心して冬を越せる場所を求めて旅立っていったのだと思う。そうじゃなきゃ嫌だよ。

 金曜の朝、まるまると膨らんだラスト・アシタバンが、頭部を下にして、顔をあちこちに巡らしているのを発見。最初は、寒さに弱って落ちそうになっているのかと思ったけれど、考えてみるに、ああ、おいらもいよいよ旅に出る頃合いだ、さて、北へ進むか南へ行くか、はたまた未開の西を目指すか、と案じていたのではないか。だとすると、こまめに観察しておれば、遂に地面を移動する姿、及び、その目的地を確かめることができそうだ。うひうひうひ、なんて、阿呆っぽい笑いを浮かべて喜んだ私です。ま、でも、連中の足てぇものは数ばかりは多いけれども、相当にのろそうだからね、このままずっと見張っている必要はなかろうぞ。小一時間おきにでも覗けばいいやね。

 その日、午後からどうしても外せない打ち合わせがあり、外出に不慣れな私はばたばたばたばたばたんばたんと、猛烈にどたばたしていたのであります。しかも、夕方にはまた別の用事もあるもんで、スムーズに進行せねば収拾がつかなくなる。忘れ物などないように。ハンカチは持ちましたか。爪は切りましたか。お菓子は200円まで。バナナやミカンはお菓子には入りません。などということをやっておるうちに、すっかり忘れてしまい、小一時間どころか、二時間以上が経過していた。うがぁー、と叫んで、慌てて、表に飛び出し、しかしながら、万が一、キアゲハの幼虫がのろくさ歩いておるのを踏みつぶしては大変なので、表に出てからは、慎重にあちこちに目を配りながら、明日葉を眺める。いない。周囲を眺める。いない。捜索範囲を広げて、あちらこちらを探すけれども、やはりみつからない。しまった。しまったなあ。

投稿者 zenta : 2007年10月17日 18:20

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