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2007年11月20日

嘔吐

 近ごろは婚礼の仕事でレストランに出かけることが多い。今日はイタリアンの“テロロッソ”へ、近ごろ読まねばならぬ破目になったサルトルの『嘔吐』を読みながら向った。

 人間。人間を愛さなければならない。人間は讚嘆すべき存在だ。私は吐きたい――そして突如あれがやって来た、あの〈嘔気〉が。

 20年ぶりなんで、なんか懐しいな。それはともかく、婚礼に魂を売ったレストランは質が落ちるというのが定説。儲かりゃ何でもありかい、それがあんたのレゾン・デートルかい、と、かなりの数のスタッフが見切りをつけてるんだって。たしかに、時間に追われて「早く食えよ」と言わんばかりに皿を下げようとしなくてはならない、とか、それじゃ専門式場と同じですな。あんな美味そうな「蟹と九条ネギのスパゲッティーニ」、式場じゃ出て来ませんぜ。ゆっくり味わわせてあげたい気持ちはわかる。まあ、レストランにしてみれば代りはいくらでもいるわけで、テロロッソでは、去っていった者は、わけのわからぬ〈嘔気〉を感じつつ食堂を出たロカンタンみたいな扱いだ。

 一挙にして私は人間の外観を失った。そして彼らは、非常に人間的なこの部屋から、後ずさりして逃げて行った一匹の蟹を見たのだ。
 (誰かに)「おれを助けにこい」と言ったならば、「なんだいこの蟹は」と彼は考えただろう。

 今日も両親は美味そうな料理に一切手を付けずに酌をして回るのに忙しい。さらに、なんだか新郎の同僚がずいぶん騒がしいなあ。て言うより一人、危ないのがいる。日本酒持ってこーい、っつって、先輩後輩かまわず一気させ、自分はラッパ飲みが始まった。大丈夫かこいつ。イタリアンだから日本酒の在庫は少ない。10本飲み切っちゃった。で、やっぱ大丈夫じゃなかった。涙涙のはずの新婦さん手紙朗読にチャチャ入れまくって台無しだ。親戚のおじさんが「静かにしなさい」なんてたしなめてもお構いなし。トドメは新郎が謝辞で。「なんか大騒ぎで行儀悪いですが、私も含めて愛すべき連中です。みなさん大目に見てやって下さい」。
 見られるわけなかろうよ。新婦父、激怒。おまけにあいつ、吐いてやがった。そんなゲロロッソにフランス人の星は無し。てゆうか、対象外だよな。

投稿者 shachi : 2007年11月20日 01:30

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