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2007年12月12日

予約の有りや無しや

 お焦げっておいしいよね、という人をよく見かけるけれども、私はさほど関心はない。我が家では土鍋や釜で炊くので、そんなものは珍しいというほどのものではないせいかもしれない。昨日の豆ごはんもちょっと焦げました。
 その、人々の好むところである焦げた部分が災いしたのですよ。微妙に粘度の高い焦げ飯に抱き込まれるようにして、右奥歯の銀の詰め物がぽかっと取れた。ああ、歯医者へ行かねばならんのか、と嘆息。うはぁ。
 付き合いの古い人は知っていることだが、私は嘗て「歯茎の周辺が全治一ヶ月の重傷」と医者に言わしめた痛手を被ったことがあるのである。それ以来、鬼門と化している……って、こりゃ些か大袈裟な物謂いに過ぎますがね。まあ、だが、しかし、あの時の痛さ、口も聞けず、固形物を食せぬ不自由、などなどのあれこれを思い出すと、うわぁ、鳥肌が立つ。
 まあ、でも、取れた銀歯を詰め直すだけのことだから、大事件になる筈はないよな、などと独り言つ。しかしながら、件の重傷事件の際だって、ちょっと虫歯を治すだけのつもりで出かけて行ったのに、帰路では口から止め処なく血が流れ続け、そこにはガーゼを押し込んだのみ、痛み止めをがんがん服むしか対処法はない、などという状態に陥ってしまったのだ。今度だって、侮っていたら大変なことにならないとも限らない。ううむ。ああ、何だか、お腹が痛くなってきた。
 家内によれば、人気のない薄ら暗いような医者に飛び込むからそんな目に遭うのであり、ある意味では自業自得ではないか、ということになる。御説御尤も。今時、予約制じゃない歯医者さんなんて信じられない、と言う。まあ、そうなのかもしれないけれど、私は、その隙間を縫うようにして、予約制ではない、待合室に人の少ない、歯医者に飛び込むのである。それは何故かというと、何時にどこへ、というような約束事が大きに苦手だからである。極力、人との待ち合わせなどせぬようにして生きているのに、何が悲しゅうて、歯医者に時間拘束されねばならんのだろうか。がりがりと口腔内を突つき削られ痛い思いをするのに、それに向けて約束などせねばならぬとは、何とも理不尽極まりなく思われますまいか。世間の皆様に置かれましては、そこんとこどうなのよ、と裕梨の口調で尋ねてみたい。どうなのよ?

 で、本日私はどうしたかと言うと、予約などせず、取り敢えず、旧ゲタ事務所の横を抜けて、青梅街道にでも向かってみますか、という、実にゆったりとした態度で自転車を漕ぎ出したのであります。午前11時。寒風の中ふらふらと進むと、おお、小洒落たデンタル・クリニックなるものが新しくできているではないか。
 頼もう、頼もう、と道場破り的な勢いで乗り込むと、あいや待たれい、と受付嬢に止められ、予約の有りや無しやを問われる。拙者、通り縋った武者修行中の身の上、まずは先生にお取り次ぎ願いたい、と申し入れるも、予約なき者ここを通ること罷りならんと通せん坊。可愛い顔して意地悪なおねえちゃんだなあ。しかしながら、こんなところで揉めても仕方がないので、今、予約すれば午後にはお目通り叶うのか、と尋ねたところ、何たることか、最短でクリスマス、25日になりますね、とにこやかに返される。おほほほほ、十日以上も先の話ではありませんか。阿呆か。
 では、出直して参ることにいたします、縁がありますればまたいつか。さらばじゃ。

 そんなこんなで、寒風吹き荒ぶ中、ふらふらと自転車紀行は続くのでありました。
 奥歯から零れ落ちた銀歯がポケットの中でかさこそと音を立てる。世知辛い世の中よのぉ。

投稿者 zenta : 2007年12月12日 23:06

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