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2008年04月26日

ひろっぱ

JR中央線で高円寺駅をでるとすぐに北側に建設現場が見える。杉並区が建設中の劇場の建築現場で、劇場の名を「座・高円寺」と言う。去年の公募でその名が決まったということだが、劇場案を選んだ建築のコンペのセンスとはちょいとかけ離れてるような気がしなくもない。そのあたりは演劇的なセンスということであろうか。
現場を見学させてもらった。工事は、地下3層のコンクリートの工事をやっと終えて、地上の鉄骨工事が進んでいる。狭い敷地に小劇場が3つと練習場、カフェやアーカイブが詰まっているので、地下は10m以上の深さになる。高円寺の雑多な都市空間に、垂直方向に地下空間に向かって、演劇人の夢がつまっている。それも演劇的な暗さや深さのようなイメージに繋がる。
当然、3つの劇場は重なるわけだが、現実の工事現場は、スケールのことなる沢山のものが重なりあい、実に密実で隙間がない。天井裏になる空間を、空調用のダクトが縦横無尽に走り、その間隙を縫って照明の配線やスプリンクラーなどの防災配管がなされ空間を埋め尽くしている。何もないボイドであるはずの劇場空間さえも、反転して空気が充密実に填されてるように思える。
ゆったりした気持ちのいい螺旋階段を上りきると地上の劇場にでる。地上の劇場は、街と連続した広場のような空間という考え方だったから、平土間の床が周囲の地面と同じ高さになる。大きな扉が開き、外部の空間と一体になるのである。
劇場の壁がそこそこできて囲われた感じがでてきた。ちょうどいい大きさの空間だ。舞台と観客の密な一体感が達成されるように思った。花曇りだったが、屋根がないおかげで、地上の劇場は明るく街の中にぽっかりできた空地のように感じられた。まるで原っぱや、神社の境内、西洋の広場のようである。いっそのこと、屋根をつくらないか、テントにして取り払うこともできるようにしてしまえば、実に開放的な空間になるだろうと思った。都会の真ん中にポンとできた空地で演者と見るものが場をつくる、最初に考えた演劇空間の原初のかたち、とはそのことだったのだ。
工事はこれからがクライマックスだ。あと二三ヶ月もすれば、波打つようなテントのかたちをした鉄板の屋根が、ひろっぱを覆うことになる。

投稿者 geta : 2008年04月26日 13:49

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