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2005年05月11日

早川星太郎展

 会場となったのは、阿佐ヶ谷圏内の、云わば、地元の喫茶店だったのだが、未だ嘗て足を踏み入れたことのない場所であった。だってさ、婦人服屋さんのお店を通り抜けなきゃ入れないところなんですよ。今まで、その存在すら、ぼんやりとしか認識していなかった次第。ここがCOBUなのか、と。

 さて、肝心の作品だが、私が知っている、彼の今までの作品の強烈さとは全く違う。けれども、小さい中にエネルギーが凝縮したような顔が並んでいた。
 奥の席に腰掛けた私には、それぞれの作品が見える角度が異なる。当たり前だ。正面のアヴェクの向こう側の絵は、勿論、正面に見える。一人で黙々と何かをメモしている男性の向こう側の絵は、凡そ、三〇度ほどの位置になるだろうか。私が座っている側の絵となると、角度はかなり浅く、入口側のものともなれば、零度に限りなく近い。勿論、立ってうろつきながら、全ての作品を正面から見ることも可能ではある。けれども、私には、その、自分の席からの限定された眺めが面白かったのである。一対一で正面から対峙するばかりが絵画との関わり方の唯一の方法なのではないのだね、と。斜めから眺め、ほぼ真横に位置するような絵を身を乗り出して眺め、そこに今在る作品を、私が今いる場所から、今眺める。おまけに、珈琲を淹れる音やアヴェクの会話から、レジスターの立てる金属音や婦人服屋さんの店員さんたちの声まで、その場には様々な環境音が溢れていた。良いね。普通に人間が生きている空間の中に存在する作品群。そこにあれこれが存在するにも拘わらず、なのか、そこにあれこれが存在するからこそ、なのか、兎にも角にも、星太郎の作品と私の距離は、随分近かったと思う。

投稿者 zenta : 2005年05月11日 16:21

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