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2005年07月12日

たまたま

 例のテロで、たまたま現場になってしまった「ラッセル・スクウェア」という地名には、個人的な思い出がある。

 15年前、ロンドンを目指してシベリア鉄道に乗ったら、たまたま乗り合わせたおじさんもロンドンを目指すと言った。翌日、イルクーツクで途中下車するおじさんと、縁があったら逢いましょう、と言って別れた。ひと月後、たまたまラッセル・スクウェアという公園の芝生にくつろいでいたら、背後からそのおじさんが「こんにちは」。びっくりした。
 後になってみると、あの「たまたま」はなんかの縁だったのかな、なんて思わないでもない。ところがそのおじさんは、毎年会う度に「いやあ、会うと思ってましたよ」なんて平然と言う。意外と狭いロンドンの、日本人が行きそうな大英博物館脇の公園。お互い長期滞在。彼は漱石研究者、私はなんちゃって哲学科出で、いちおうブンカつながり。大英博物館に通う理由はある、確率は決して低くなかったというわけで。さらにおじさんは、「いないかな、と思って少しは気にしてたんですよ」。恐縮ながら、あんたがテロリストでなくて運が良かった。

 10年前の地下鉄サリン。私はたまたま難を逃れた。もっとも、当時丸ノ内沿線に住み、二駅先に仕事場があったが、地下鉄にはまず乗らなかったし、しかも仕事のスタートはふつう夕方からだったから、事件に遭う確率はかなり低かった。朝の地下鉄に乗ったことがなかったわけではないが、夏期講習中とかに年一日ぐらい。9時からの授業のはずなのに、塾が開いてないとの生徒からの苦情電話で起された時ぐらいで。
 そんな私が、「たまたま」難を逃れた、と言うのは誤用かもしれない。それでも、オウムの標的が無差別だったことは、多くの人の遭難確率の底上げを意味した。もしかして単に運が良かったってだけなのかも。

 状況は刻々と変わり、今やイラクには自衛隊がいて、私はかつての30倍は朝の地下鉄に乗っている。ロンドンを再訪する金はいつまでたってもできない。そこで、

 先週、おれ(おれたち)は東京にいて、たまたまロンドンの爆発に遭わなくて済んだ。

って何度もブツブツ言ってみる。なんだかちょっと運が良かっただけなのかなって、そんな気がしてくる。

投稿者 shachi : 2005年07月12日 05:31

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