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2005年08月31日

減塩の行く末

 晩飯を締め括るに辺り、ちょいと漬物で白米を掻き込むか、とうい気になった。それが、日本人たるもの。んで、冷蔵庫を空けて、何があるかと覗いてみると、昔ほどには黄色くない沢庵がありましたよ。で、ぼりぼりと齧る。何だよ、しょっぱくないね。これじゃ、米をがあがあ掻き込む気にはなれん。他に何かないのかと、冷蔵庫に舞い戻る。そうそう、そう言えば、キムチを買ってきてあったんだ。早速、開封し、口に放り込む。ああ、と溜め息を漏らさずにはいられない。またか。減塩ですよ。減塩。キムチよ、おまえもか。くそぅ、近頃は何でもかんでも減塩しやがって、世の中、おかしい。貴様等、そんなに健康に縋り付いて生きていたいのか。塩分の不足したキムチなんざ喰ってらんねえよ。こちとら、江戸っ子でい。更に、冷蔵庫を物色する。おお、蒟蒻の溜まり漬みたいな代物があるじゃねえか。群馬産。北関東ったら、味が濃いって決まってますからね。これなら安心だってんで、口に放り込む。むむっ、むむっ、むむむ。何だよ、蒟蒻、おまえもかい。貴様までもが減塩しておるのか。くそぉ、寄ってたかって俺様を馬鹿にしやがって。物色、物色、なおも物色。そして、梅干しを発見。漸く、安心することができた。梅干し。素晴らしい響きではないか。これだ。俺が求めていた塩分の固まりがまさにここにあるのだ。見ているだけで、唾が溜まってきたよ。さあて、これで飯をがががーっと掻っ込んでね……って、口に放り込むと、うぉおお、何たることか、しょっぱくねえ。おまけに、薄ら甘いと来たもんだ。パッケージには、蜂蜜が何たらかんたら、と書かれており……許せん。絶対に、許せん。俺は梅干しを容れ物ごと食卓の上にぶちまけた。ちょいと、おまえさん、どうしたんだい、と女房が止める。その横では、でぶ猫が「ふんぎゃあ」と、つまり人間語で言うところの「おまえ、ばか。おまえ、うるさい」と抗議の声。いやあ、諸君、私の怒りは、今夜ばかりは止まらない。台所から、塩の入ったプラスチックのでかい箱を持ち出して、大匙で二杯頬張る。うおお、これだ。これこそが、拙者の欲求している塩分だ。勢いで、頭から塩を浴びる。浴びる。買い置きの塩の袋も引き千切って、浴びる、浴びる、浴びる。全身塩塗れ。うひゃひゃひゃ。さっきまで抗議の叫びを上げていたでぶ猫も逃げ出した。これこれ、これですよ。塩、塩、塩。最早、自分でも何がしたいのか判らない。全身真っ白な塩男となった俺様は、世間の減塩家庭を全てぶち壊してやろうと、しおーっ、しお、しお、しおーっと、叫びながら、表に出た。しおーっ、しお、しお、しおーっ。どこへ向かうのか。しおーっ、しお、しお、しおーっ。行き先は、塩の神のみぞ知る。……って、飽きてきたので、続きは、誰か考えて下さい。

 しかしねえ、真面目な話。昨今の著しい減塩傾向ってどうなのよ。これって、日本の食文化の崩壊じゃありませんこと? それとも、こんなことを思っておるのは、儂だけなのか。どうにも解せぬ世の中である。

投稿者 zenta : 2005年08月31日 23:20

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