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2005年09月14日

舟というものは傾きます

 最後にボートに乗ったのはいつだったろうか。おそらく、三十年ほど前のことではないかと思う。芦ノ湖だったか。それとも、蓼科湖だったろうか。
 小さいボート……井の頭公園にあるようなやつね……ってのは、想像以上にバランスが悪いものである。あの上で、ぴょんぴょんジャンプしたり、前後に立って兄弟でボクシングごっこしたりしてはいけない。簡単に転覆します。片足をボートの縁にかけて、おいらは海の男よ、なんて裕次郎を気取ってみたりしてもいけません。転覆しないまでも、大幅に傾き、慌てることになります。そもそも、海の男なんかじゃなくて、そこは湖なんだしさ。
 そういうバランスの悪いところが舟ってものの味なんだろうし、乗り物としてのリアリティなのでありましょう。そのことは、恐らく、でかい舟でも変わらないんだろうな、と思う。でかくなっても同じようなことがあるのではないか、とね。例えば、五十人乗りなり百人乗りなりの屋形船を仕立て、客が全員左舷側に集まり、世に言う箱乗りの体で身を乗り出したりして、イェーッなんてVサインなんぞ出してみたりしたらどうなるだろう。ひっくり返りゃしないまでも、どんと傾き、ビールが零れたり何だりと一騒ぎあるに違いない。

 さて、四百八十人乗りの船で、船頭を筆頭に三百二十七人が右側に陣取っている。左舷をうろついている者は二十人に満たない。あとは、ざっと真ん中ぐらいかなってなもの。そんな状態を想像してくれ給え。どうだい、兄弟。そりゃ、理科の苦手な君でも容易に想像できるだろう。そうそう、その通り。すんごく傾いていそうだよね。あーた、こんなんで、長旅なんかできませんよ。無理だよ。無理、無理。危なくってしかたがねえ。いっそのこと、早いとこ転覆しちゃうってのもありかな、なんて、言ってみたりして。

投稿者 zenta : 2005年09月14日 00:49

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