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2006年05月23日

ひこばえ

 今年の田植えもまた、美しいラインは引けずじまいだった。ただ天気は良く、気持に余裕があるせいか、欠植も少なく、作業はスムーズだった。欠植とは、機械の腕が苗を掴みそこなって植わらないことである。機械での作業が終わると補植をする。欠植個所や機械で植えられない隅っこなどに手植えするのである。
「今年ゃあケッショクもなかったで、あんまり」
「ああ、ほんじゃホショクしらざぁや」
 それにしても、ケッショク、ホショクなど音読みの言葉は、いね、なえ、たうえ、など訓読み用語に比べてなんか百姓っぽくない。どちらも田植え機以前にはあり得なかった仕事であり、その登場に合わせてたぶん農協によって編み出されたもの。高度成長期の時代の雰囲気が音読みだったのか。わからないが、もう一つ気になる音読み言葉がある。ブンケツ。

 ぶんけつ 【分蘖】 (名)スル〔「ぶんげつ」とも〕主にイネ科植物が根に近い茎の節から枝分かれすること。 —大辞林—
060522mm1.jpg
 毎年余らすぐらい苗は用意する。その余った苗が補植に回るわけだが、百姓根性は余らすことを好まない。機械の腕には大体三株を目安として掴ませるよう設定してはいても、ところどころ一株しか植わっていなかったりするとき。実のところ一株だけでもじゅうぶん分蘖して成長するのに、ここは足しとこう、という気になってしまう。
「もういいら、ホショクは」
「もってゃあにゃあけんどねぇ」
「ブンケツすんだからいいんじゃにゃあの」
 自然の生命力に任すのが一番である。余った苗は梨畑で土に帰ってもらえばいい。「分蘖」はいつから言い出したか知らないが、なかなか良い語感だと気に入っている。でも、今回調べて初めて知った「蘖」だったらもっと良かったかも。

 ひこばえ 【蘖】 〔「孫(ひこ)生え」の意〕樹木の切り株や根元から群がり生える若芽。 —同—

投稿者 shachi : 2006年05月23日 15:36

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